不動産売買

売渡承諾書の書き方や記載事項、法的性質を解説!

売渡承諾書の書き方や記載事項、法的性質を解説!

不動産を売買するときに、通常は買主から売主へ対して「不動産購入申込書」というのを提出します。
これは、「不動産をこのような条件であれば購入したいです」という申込となります。

これに対して、売主から買主へ「あなたに売り渡すことを証明します」という返答の書面となっております。

実務では、この売渡承諾書までは交付しないケースも多いのですが、民法においては売主の売ります・買主の買いますの「意思表示」をした時点で売買契約が成立するということですので、それを書式として残しておくためのものです。

なお、後述いたしますが、実務においては買付証明書・売渡承諾書の交付だけでは売買契約は成立しません。

売渡承諾書とは

不動産の売買において、当該物件を売り渡す意思があることを表明する書面で、売主が買い受け希望者に対して交付する。書面には、売渡価格や売渡条件等が記載されている。

売渡承諾書は契約締結が可能である旨を表明するものであって、契約に至る過程で交わされる確認等のための文書に過ぎず、それを交付しても契約の申込みや承諾の効果はないとされている。

ただし、売渡承諾書の交付によって一定の信頼関係が形成されることとなるので、売渡承諾書を交付したにもかかわらず合理性に欠ける理由等で契約に至らなかった場合には、信義則に反するとされることがある。

R.E.wordより引用

購入者が「いくらだったら買います」という購入申込書に対して、「だったらその金額で売ってもいいよ」という言った言わないをなくすために交付される書面ですので、実際にこの書面を交付されたからと言って、民法でいうところの売買契約が成立する訳ではありません。

そして、買付証明書・売渡承諾書が交付されているのも不動産取引においては絶対要件というわけでもなく、それらが交付されない不動産取引も多いです。

売渡承諾書の記載内容

売渡承諾書にはどのようなことが書かれているのでしょうか。
一般的には以下のような内容が記載されています。

  • 売渡金額
  • 物件の所在地や面積など物件概要
  • 売渡条件
  • 売主名 など

当然、売渡す金額が記載されているのと、物件の特定、そして条件と続きます。

不動産売却を希望するものが希望の売却条件、そしてその条件であれば不動産を売却しても良いよという内容を記載して買主に交付するものですが、その内容さえ書かれていれば具体的な形式は決まっていません。

売渡承諾書を交付すれば売買契約しなくてはいけないのか?

買主から買付証明書、売主から売渡承諾書がお互いに交付され、意思表示の一致がなされた場合でも、実は売買契約は成立していません。

不動産の売買というのは、とても大きな事であったり、慣行として手付金の授受が要件であったりしますので、手付金の受け渡しや売買契約書が作成されていないうちには売主は「やっぱやめる」と言えるわけです。

その点について裁判所による判例も、買付証明書・売渡承諾書の相互取り交わしによる売買契約の成立を一貫して否定しています。

あくまでも、買付証明書や売渡承諾書は合意事項の確認書という立場ですので法的効果はありません。

ただし1点だけ注意があり、売買契約の直前まで進み、買主が購入するために色々な準備をしていたのに売主の気分で「やっぱやめた」といわれて買主に損失が出た場合には、契約上の過失を理由に損害賠償が発生する可能性があります。

判例では、売主が売渡承諾書を交付して土地の売買において売買代金や売買契約の締結日まで決まっている場合に、売買契約前だからと言って別の誰かに土地を売ってしまったようなケースで、その売主の行為は契約締結を期待した買主の利益を損害するものだとして不法行為の成立を認めたようなものもあります。

買主の期待を裏切ってはいけないというわけですね!

ただしこちらの場合にも、売主に損害として請求できるのは契約が締結されると信頼して出費した金額であり、転売して儲けられるはずだった利益などは含まれません。

まとめ

売渡承諾書は売主が「このような条件であれば不動産を売ってもいいよ」という確認のための文書です。

その書面には、売買金額や条件、物件の概要などが記載されています。

ですが、売渡承諾書を交付したからといって売買契約が締結されるわけではありません。

あくまでも、売主買主の条件の確認のための文書となっています。

売渡承諾書を提出し、売買契約直前まで進んだのに売主の気分で「やっぱやめる」と言った場合に買主が損失を被っていた場合にはその損失を賠償しなければいけない可能性もあります。

買主の期待を裏切らないように、売渡承諾書について法的性質はないにしても慎重に交付することをおすすめします。