近隣トラブル

隣家との間で窓に目隠し設置要求の義務は?法律関係はどうなっているの?

お隣の目隠し設置義務

隣家との間で窓に目隠し設置要求の義務は?法律関係はどうなっているの?

普通に住んでいたらある日、隣家に新しく家が建設されている。
ただ、お隣の窓から我が家が丸見えになっている。。

こんな時にお隣の窓に目隠し設置をお願いしたいという場合、その要求は通るのでしょうか。

また、逆に新しい家も同じく目隠し設置を要求できるのでしょうか。

そのような問題を今回は解説していこうと思います。

窓に目隠し設置の要件

隣家との境界線から1m未満の場合で、他人の宅地を見渡せる窓やベランダなどを設ける者は目隠しをつけなければいけません。

民法235条1項

境界線から1m未満の距離において他人の宅地を見通すことのできる又は縁側(ベランダを含む)設ける者は、目隠しをつけなければならない。

Wikibooksより引用

この条文で気を付けたいところは、”設ける者”という文言で、普通に解釈すれば後から家を建てた方が設置しなければいけないようにも見えますが、実はそうではありません。

建築時期の前後によって変わる訳ではなく、先に建てた方が設置しなければいけない場合もあるという事です。

他人の宅地を見通すことのできる窓又は縁側とは

以下のような判例があります。

民法235条にいう「他人の宅地を観望すべき窓又は縁側」とは、およそ他人の宅地を観望し得る窓または縁側のすべてを指すものではなく、窓または縁側の大部分が遮へいされる等により、特に意識しようとしてみようとすれば見えるがそうでない限り他人の宅地を観望し得ないようなものは含まれない。

東京地判昭61.5.27

簡単にいうと、窓があったらなんでもかんでも「他人の宅地を見通すことのできる窓」にあたるのではなく、たとえばお風呂やトイレの小窓、窓の下部だけ外に出て全開できないの窓といった大部分が遮へいされた窓は該当しないといっています。

隣の家を覗いてやろうと覗かない限り見えない場合は該当せず、普通に生活しててやたらとお隣さんと目が合うようなイメージが該当します。

ちなみに曇りガラスであっても、引き違い窓で全開すればお隣を容易に見渡せる窓は要件に該当します。

1m未満でも要件に該当しないケース

境界線から1m未満の場合でも、即座になんでもかんでも要件に該当する訳ではありません。

以下の場合、要件には該当しません。

  • その地域で、1m未満でも目隠しを設置しなくても良いというような慣習がある場合(民法236条)
  • 目隠し設置の請求が権利の濫用にあたるとされるケース

1つ目の慣習がある場合には、そちらが優先されますので、235条の要件には該当しません。

目隠し設置の請求が権利の濫用にあたるとされるケース

以下のような判例があります。

住宅の窓から確認できる隣地の範囲が限定的であり、隣家所有者が日常的に被る不都合はさほど重大なものとは考えられないこと、そして隣家所有者自体も境界線から1m未満の位置に相手の宅地を観望できる窓を設置していること、また、隣家所有者の要求に応じて窓のガラスを曇りガラスにしたり、一部の窓を小窓に変更するなど一定の配慮を示していることを考慮して、隣家所有者からの目隠し設置請求は権利の濫用として許されない。

東京地裁平成5年3月5日判決

窓から見えるお隣の宅地が限定的であったり、お隣自体も境界線から1m未満に窓などがあったり、配慮して曇りガラスなどにしたのにさらに言ってくる場合などは、権利の濫用としてお隣からの目隠しの設置請求は認められないということになります。

まとめ

原則でいえば、境界線から1m未満にお隣の宅地を見渡せる窓やベランダがついていれば目隠し義務があります。

お隣の宅地を見渡せる窓とは、窓であればなんでもかんでも該当する訳ではなく、お風呂やトイレの小窓などは該当しません。

そして、境界から1m未満であっても、権利の濫用が認められる場合などには要件に該当せず、目隠しの設置義務はおいません。

もちろん、ケースバイケースで現地確認しないと分からない事もありますので、是非法律家のもとへ訪ねてみて下さいね。